−5年間で治安の危機的現状を脱します−
治安対策の緊急性
これまで我が国は、主要先進国の中で最も治安の良い国であることを誇りとしてきま
した。しかしながら、近年、我が国の治安は緊急に悪化しており、刑法犯認知件数(平
成14年約285万件)は、7年連続で戦後最多を更新し、昭和期の2倍となっている。一
方、刑法犯検挙率は約2割と過去最低の水準に落ち込んでいます。
犯罪の内容は、殺人、放火等の重要凶悪犯罪、路上強盗、ひったくり等の街頭犯罪、
侵入窃盗、侵入強盗等の侵入犯罪が急激に増加しています。その検挙人員のうち約4割
は少年であり、中でも国民の身近で発生する街頭犯罪は検挙人員の約7割を少年が占め
るなど、少年による犯罪は極めて憂慮すべき状況が続いています。
また、来日外国人による犯罪が、20年前と比較して、検挙件数で約10倍、検挙人
員で約5倍となっているとともに、その凶悪化・組織化、全国への拡散の傾向が顕著と
なっています。その背景には、25万人とも言われる不法滞在者の存在があります。
一方、薬物情勢については、依然として覚せい剤の大量押収事案がみられ、大麻樹脂
及び錠剤型麻薬の押収量が過去最高となるなど、一層深刻の度を増しています。
さらには、米国における同時多発テロ、イラク戦争、朝鮮半島情勢等最近における緊
迫する国際情勢の下で、重大テロ事件の発生も懸念されるところである。
こうした治安の悪化に対して、国民は大きな不安感を抱いており現在の極めて厳しい
治安状況は、我が国にとって、もはや一刻の猶予も許せない緊急事態であります。治安
の悪化傾向に歯止めをかけ、我が国の伝統である良好な治安の回復を図るために、「5
年で治安の危機的現状を脱する」ことを目標とする「治安対策の強化に関する緊急提
言」の取りまとめを行った。
緊急提言その1
5年で、治安の危機的現状を脱する。
25万人とも言われる不法滞在者を5年で半減させる。
そのため、
○ 治安関係人員は、国家公務員計画削減の「別枠」扱いとし、緊急増員す
べきである。
○ 治安関係施設の収容能力の改善など、関係予算についても、今後5年間
は、「別枠」扱いとすべきである。
〔人員関係〕
(1) 警察官の増員
諸外国の警察官一人の負担人口が概ね300〜400人であるのに対し、我が国は
533人という高負担となっている。負担人口を限りなく500人に近づけるべく、
さらなる警察官の増員が必要。
(2) 入国管理職員・関税職員の増員
日本における入国管理人員は、香港の約半分、米国の1/12であり、来日外国人
犯罪対策や国際テロ対策、密輸対策等の一層の強化を図るためには、入国管理の
強化が求められます。5年間で不法滞在者を半減させるためには、厳正な入国管
理と摘発の強化が不可欠であり入管職員数を倍増する必要があります。同時に、
麻薬、偽ドル札など密輸入防止や密航防止の観点から、所要の体制の整備を図る
必要があります。
(3) 刑務所等職員の増員
刑務所等職員数は米国の1/25、英国の1/3、職員負担率は米国の1.4倍、英国
の2.5倍であり、職員負担率を米国並みの3人に近づけるべく、行刑施設職員の
5割の増員が必要。
(4) 検察官等の増員
近年検挙数が急増しており、このままでは、警察などが検挙しても適正に対処
することが困難となることが危惧されるため、検察官及び検察事務官について、
適切な増員が必要。
(5) 海上保安庁職員等の増員
周囲を海に囲まれた我が国にとって、水際で犯罪の流入を防ぐという意味で海
上保安庁の役割は極めて重要と考えます。最近の犯罪情勢や国際情勢の変化に対
応するため、同庁職員の所要の増員が必要。
(6) 麻薬取締官の増員
潜在化、巧妙化する外国人薬物密売組織や暴力団等による組織的な薬物密輸を
摘発するため、麻薬取締官を増員して捜査体制の強化を図るべきである。
〔施設関係〕
(1) 留置場の整備
警察署の留置場における被留置者延人員は約485万人であり、10年前の2倍以
上となっている。警察署の新築・増改築時における留置場の整備が急務であるほ
か、現下の情勢から緊急に対処するため、専用留置施設の建設を推進すべきである。
(2) 刑務所等行刑施設の整備
刑務所・拘置所等行刑施設については、収容率106%の過剰収容状態となってい
ます。現在の平均収容人員が7.1万人であることを勘案し、8万人程度まで収容可
能となるよう、速やかに行刑施設の整備を行うべきである。
(3) 入管施設の整備
現在約25万人と推定される不法滞在者を5年で半減させることを目標に、現在
の2倍の人数が送還可能となるよう、送還手続きを迅速化しつつ、入管施設の整
備を実施すべきである。
〔治安活動を支える基盤整備関係〕
(1) 侵入犯罪・街頭犯罪対策
○ 「安全・安心まちづくり」の推進のため、スーパー防犯灯及び子ども緊急
通報装置を整備
○ GIS(地理情報システム)を利用した犯罪情報地理分析システムにより、犯
罪情勢を分析し、防犯及び犯罪捜査に活用する。
(2) 外国人防犯対策
○ 通訳体制の充実・強化を図る。
○ 出入国管理の徹底を期するとともに、国際組織犯罪等に係る捜査・調査の効
率化を進めるため、法務省・財務省・警察庁と共同で事前旅客情報システム(
APIS)の導入を図る。
○ 査証の偽変造や二重申請等の不正防止のため、外務省と関係省庁等との間で
査証審査・発給情報の即時共有化を図るネットワークを強化する。
○ 偽変造旅券への対応を強化するため、生体情報技術(バイオメトリスク)の
旅券への活用を図る。
○ 沿岸警備・監視体制を強化するため、新型ジェット機、高性能巡視船を整備
するとともに、監視カメラの設置など港湾保安施設を整備する。
(3) 重要凶悪犯罪対策
○ 自動車盗難事件や重要犯罪の解決に多大な成果を上げている自動車ナンバ−
自動読取システム等の整備を図る。
○ DNA型鑑定、プロファイリング等、高度な科学技術を積極的に活用する。
(4) 薬物・銃器対策
○ コンテナ貨物大型X線検査装置、埠頭監視カメラ、麻薬探知犬、薬物検知器、
分析装置等の装置資器材を整備する。
緊急提言その2
人員・予算の緊急措置を講ずるとともに、早急に総合的な治安対策の検討を
開始。
(1) 治安関係機関の連携システム・情報ネットワークの構築
各省庁横断的な連絡組織を構築するなど、省庁間のさらなる協力・連携体制の
強化を図る。同時に、犯罪対策の重要なポイントである情報収集活動を強化する
とともに、国内外の治安関係機関との情報交換を促進し、治安情報ネットワーク
の確立を急ぐ。
(2) 犯罪防止のための社会づくり
犯罪の発生抑止に万全を期するには、政府の役割とともに、国民・地域社会や各
種団体等が果たすべき役割が大きい。国民の犯罪防止意識を高めるとともに、住民
自らが参加する防犯システムの構築など国民をあげての対応が肝要。
@ 地域住民による防犯活動
警察、自治体、自治会、ボランティア、NPO等との連携が更に強められ、地
域による自主的な防犯活動が大きく推進されるようシステムづくりを検討。
A 防犯に強い住宅の普及
住宅行政に防犯性の観点を明確に位置付け、自治体、関係団体、関係業界等との
一層の連携を図りつつ、防犯に強い住宅の普及促進を検討。
B 公共空間における安全環境設計
道路、公園、駐車・駐輪場、公衆トイレなどは、わいせつ事件やひったくり、暴
行などの現場となりやすい。治安関係機関のみならず関係省庁が連携した総合対策
を推進すべきであり、また、安全・安心確保のための民側のアクションに対して積
極的に支援。
(3) 少年非行・防犯総合対策
少年による犯罪は、凶悪化・粗暴化の傾向が続いており、この背景には、家庭の
教育機能の低下、地域社会の少年育成機能の低下、学校教育の問題、「大人」社会
における規範意識の低下など、さまざま要因が複雑に絡み合っていると考えられる。
社会全体での総合的な対策を検討。
(4) 外国人犯罪対策
外国人犯罪は、ここ数年で急激に情勢が変化しており、この対策を誤れば、将来
にわたり我が国の治安を大きく揺るがしかねないところまできている。このため、
外国人の不就労・不法就労対策を進めるとともに、今後5年間で不法滞在者を半減
させることを目標に、厳正な入国管理及びホテル等での旅券チェック強化など不法
滞在者摘発の総合的な対策を検討。
(5) 組織犯罪・テロ対策
組織的なけん銃・薬物の密輸・密売事件、暴力団による犯罪、来日外国人組織に
よる犯罪など、組織を背景として行われる犯罪が増加している。同時に、テロへの
対策も大きな課題となっている。これらに適切に対処するためには、関係機関の情
報収集機能の強化に務めるとともに、犯罪組織の資金源を遮断する対策を強化する
必要がある。さらには、有効な捜査手段を確保するため所要の法整備を検討。